変化球（並）

海猫　　　　　　　　　　　n.t

貴方が見えなくなってから伸ばし始めた髪は
私の心とは裏腹に腰の線を越えました

「春になればまた会いましょう」と木の葉紅く燃ゆる頃に
肩寄せ合い誓ったあの時は今や夢か現か

彼岸花 揺れる畦道 忍びながら貴方見送った
また会えるそう信じていたから涙は流さなかった

許されないものと わかっていたはずなのに
貴方が絡ませた指先 振り解く勇気なくて

貴方が見えなくなってから書き始めた長文は
一度ともなく返事が来ず 行く宛を失くしました

蝉時雨 向日葵 子供達 何も知らずはしゃぐ
『貴方の言う春はまだですか？まだ涙はいけませんか？』

貴方を忘れてしまう そう それだけで済むのに
生きていく意味さえ失くすことになりそうで・・・怖い・・・

私はずっと待つわ この長髪髪色朽ちても
命絶えるまで待つわ この世に貴方いなくても

如月 海岸線 白波立つ水面には雪
空には海猫鳴いている その声を枯らすまで
愛する人の名を呼ぶ 愛する人のために